クリニックレターvol.85「骨粗しょう症について」

2024年1月15日

人生100年時代と言われて、健康寿命を延ばして元気に生活していくことが推奨されています。65歳以上になると転倒による骨折や関節疾患といった運動機能の障害が大きな割合を占めています。今回のトピックは、骨折の原因の中でも、特に多い「骨粗しょう症」です。

【骨粗しょう症とは】

骨粗しょう症とは、骨の密度が低下し、骨の強度や質が悪くなることで骨折しやすくなる疾患です(下図イラスト参照)。日本の中での骨粗しょう症の患者さん者は、約1,300万人(2015年)と推測されています。骨折は寝たきりの原因にもなり、健康寿命を短くする要因になっているのですが治療が適切に行われている患者さんが少ないのも実情です。

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骨粗しょう症は、基本痛みがありません。自覚症状がないまま、加齢とともに進行して、気が付くと骨折のリスクになっていくことです。腰痛などの痛みがあれば、骨粗しょう症から骨折している可能性が高いです。

骨粗しょう症は、自覚症状は無くても長い時間をかけて進行します。日常生活に気をつけて骨折を予防し、薬物療法などの治療を続けながら、健康で楽しい生活が送れるよう、気を付けていきましょう。

【骨粗しょう症の原因は?】

  1. 加齢高齢になると骨密度が低下しやすくなります。
  2. ホルモンの変化女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨形成を促進し、骨の密度を維持する役割があります。女性は閉経により、エストロゲンが低下し、エストロゲン低下が骨粗しょう症の原因となります。
  3. 遺伝的要因家族歴や遺伝子の影響が骨粗しょう症のリスクとなります。
  4. 栄養不足骨の形成に関わるカルシウムやビタミンDが不足するとリスクが高まります。
  5. 生活習慣過度の飲酒や運動不足、喫煙もリスクが高まります。

【骨折が起こりやすい部位はどこ?】

骨粗しょう症では、大きな事故に遭わなければめったに骨折しないような部位も、折れやすくなります。椎体(背骨)、大腿骨近位部(足のつけね)、とう骨(手首)、上腕骨(腕のつけね)などです。中でも大腿骨近位部を骨折すると、寝たきりになる場合があります。骨粗しょう症では、一度骨折すると何度も骨折を繰り返す危険性が高くなるので、1回目の骨折を防ぐことが大切です。日常生活では、つまずいたり、すべったり、バランスをくずして転んだりしないように気をつけましょう。

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【骨粗しょう症の診断法

DXA(デキサ)法

二重エネルギーX 線吸収測定法の略で、異なるエネルギーのX線を同時に使用する検査法であり、一般的に腰の骨(腰椎)や脚のつけ根(大腿骨近位部)の特定の部位に対して、低用量のX線を照射し、骨密度を計測します。

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超音波法

当クリニックでも行っている簡単な骨粗しょう症の評価です。放射線は使用せず、超音波を用いて、簡単に骨密度を測定できます。右足のかかとを乗せるだけで、約10秒で結果がわかります。X線を使用していないため、妊娠中の方でも測定することができます。

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【骨粗しょう症の治療について】

骨は新陳代謝を繰り返しており、新しい骨を作る働き(骨形成)」と古い骨をこわす働き(骨吸収)が絶えず行われています。治療方法は多種多様であり、骨が壊れないようにする内服薬や注射製剤、また、骨を作る注射薬が中心となります。骨粗しょう症の補助薬として、エストロゲン製剤やビタミンD製剤、カルシウム製剤などの内服薬があります。

【最後に】

骨粗しょう症は、骨のぜいじゃく性を増し、骨折のリスクを高めます。前項でも述べましたが、骨粗しょう症は基本症状がほとんどありません。ただ、骨密度の検査により、骨の健康状態やリスクが早期に評価され、予防や治療の手段が早めに始められます。では、骨粗しょう症の検査って何歳から受けたらいいのか。明確な答えはありませんが、一般的に65歳以上の女性や閉経を迎えた女性、また、男性も70歳以上なれば、積極的に骨密度の検査をご検討してはいかがでしょうか?

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