クリニックレターvol.71  「国内初の経口新型コロナ治療薬ゾコーバについて」

2022年12月 2日

厚生労働省で11月22日、経口新型コロナウイルス感染症治療薬・ゾコーバ錠(一般名:エンシトレルビル フマル酸)が緊急承認されました。今回は既に同月28日から供給開始されたこのお薬について触れてみたいと思います。

【ゾコーバとは】

ゾコーバは塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス感染症の飲み薬です。感染症の流行などの緊急時に迅速に必要と思われる医薬品が使用できるように5月に新設された緊急承認制度の初めての適用例となりました。

【どのようなお薬か】

効能・効果は「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症」です。
用法・用量は12歳以上の小児及び成人には1日目は125mgを3錠、2日目から5日目は125mgを1日1回経口投与する飲み薬(経口抗ウイルス薬)です。

【対象の患者さんはどのような人か】

主に軽症者が対象とされていますが、日本感染症学会※1では特に高熱や強いせき、強い喉の痛みなどの症状がある患者さんに症状が発現してから遅くとも72時間以内に初回投与することを推奨しています。

【服薬時の注意点】

高血圧や脂質異常症の薬など併用できない薬が36種類ほどあります。妊婦さんや妊娠している可能性がある患者さんには使用できません。よって投与前にはどのようなお薬を服薬されているかなど症状も併せて正確にご報告いただく必要があります。
日本感染症学会の提言※1では、自然に治ることが多い重症化リスクのない軽症者に対しては「症状を考慮した上で投与を判断すべき」と記載されています。

※1参照:日本感染症学会「COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 15 版」より
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_221122.pdf

【他のコロナ治療薬と比べてどうか】

ゾコーバの対象は12歳以上の軽症(肺炎の所見なし)や中等症Ⅰ(呼吸困難、肺炎の所見あり)に使用でき、さらには重症化リスクが低くても服用できることが大きなポイントです。これまでも軽症者でも飲める経口薬はありましたが、数が少なく、重症化リスクの高い人や中等症II(酸素投与必要)の人向けのお薬が多かったのが現在の状況です。

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【承認前の試験結果はどうだったか】

  • ゾコーバ服用3日後、ウイルス量が30分の1に減少した。
  • オミクロン株に特徴的な鼻水や喉の痛み、せき、発熱、倦怠感の5つの症状の改善効果を認めた。
  • 症状が消えるまでの期間は、プラセボ(偽薬)群が約8日で、ゾコーバ服用群が約7日となり、1日短縮出来た。

【最後に】

ゾコーバは国産であり、重症化リスクの有無にかかわらず、軽症患者さんにも投与できる内服薬です。効果に関しては、やや疑問が残るとこですが、今後、他の人に感染させるのを予防する効果や後遺症の改善効果のデータが出れば、より選択肢の幅が広がるのではないかと思われます。

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