クリニックレターvol.77「生活習慣病における糖尿病について」

2023年5月15日

ゴールデンウィークも終わり、健康診断や特定健診などの結果から、何の自覚症状もないが、血糖値異常を指摘された方もいるのではないでしょうか?今回から3ヵ月連続で糖尿病、高血圧、脂質異常症に代表される生活習慣病を特集していきます。まず、今月は第1弾として、「糖尿病」を特集します。

糖尿病に関しては、ホームページコンテンツメニュー内の診療内容にも記載がありますが、より、詳しく説明します。

糖尿病とはどんな病気?

膵臓(すいぞう)のベータ細胞という場所では血糖を下げるインスリンというホルモンが作られています。このインスリンが食事を摂取した際に上昇する血糖を正常にコントロールできなくなる病気のことを指します。

インスリンには、食事などを摂取することで上昇する血糖値を調整する働きがありますが、うまく機能しないと体内で血糖の数値が急激に高くなってしまいます。
糖尿病には大きく分けて下記の2つのタイプに分かれています。

  • 1型糖尿病:膵臓から血糖を下げるインスリンが分泌されず、血糖上昇をきたす病態です。インスリン注射の絶対的適応であり、原因はウイルス感染などが関与する場合もありますが、詳細は不明な場合も多く、病態は幼少期からも見られます。
  • 2型糖尿病:日本人の糖尿病患者さんの9割を占める。インスリンの分泌が不足している、もしくは十分に機能していない。生活習慣(食事や運動など)と体質(遺伝)にも影響されると言われています。内服治療やインスリン注射などが行われます。

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どうなると糖尿病と診断されるの?

「糖尿」と書かれていますが、尿の検査は確定診断に必須ではありません。また、砂糖などの甘いものの取り過ぎで肥満とイメージされる方も多いですが、アジア圏の患者さんはやせ型の糖尿病が非常に多いです。診断として、下記のように体内の中での血糖値の数値を見て診断されます。

  1. HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):血液中のヘモグロビンにブドウ糖が結合したもの。
    糖尿病は6.5%以上
  2. 空腹時血糖:10時間以上絶食した状態での血糖値=126mg/dL以上
  3. 随時血糖:食事時間とは無関係に測定した血糖値=200mg/dL以上
  4. 75gブドウ糖負荷試験:空腹時に75gのブドウ糖を飲み30分後、1時間後、2時間後の血糖を測定=200mg/dL以上

糖尿病になると何が怖い?

糖尿病は、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病と同じくサイレントキラーと言われ、病気の初期段階~中等度程度の悪化までは、自覚症状が出にくい厄介な病気です。多くの方が健康診断で血糖異常を指摘され、来院される場合が多いですが、重症化すれば、喉が乾く、尿の回数が非常に多い、体重が減ってくるなどの症状が出てきます。糖尿病を治療する理由は?と聞かれる事がありますが、答えとして、『合併症を予防するため』と答えています。また、糖尿病自体を放置しておくと眼や神経、腎臓にも悪影響を及ぼすことがあり「糖尿病3大合併症」とし定義されます。また、3大合併症は頭文字を取って「しめじ」と称されることがあります。

  1. し=糖尿病性神経障害(神経の障害)
    合併症の中で最も頻度も多く、症状の出現も早く発症すると言われています。高血糖状態が続くことで、手足の神経に異常が起こり、足や手の指に痛みやしびれなどの感覚が起こる合併症です。慢性的な痛みになる方もいれば、逆に痛みに鈍感になる場合もあります。仮に足趾に潰瘍や壊疽を起こしても痛みが無く、気づかない場合もあります。
  2. め=糖尿病性網膜症(眼の障害)
    高血糖症状が続く結果、目の網膜にあるとても細かい血管がダメージを受けて動脈硬化を起こし、目の神経細胞に栄養や酸素が供給されずに視力低下を起こしていく合併症です。進行していくと失明に至る場合もあります。糖尿病を発症している場合、眼科でも定期的な眼底検査を行うことを推奨します。
  3. じ=糖尿病性腎症(腎臓の障害)
    高血糖症状が続いた結果、腎臓にある細かい血管が動脈硬化のように固くなってしまい、尿の検査にて尿糖以外に尿たんぱくが検出されます。進行していくと、体内の老廃物を尿にろ過して排泄する機能が失われてしまいます。最終的には透析導入にいたるケースがあります。

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3大合併症も大切ですが、大血管障害として、脳の血管が詰まる脳梗塞、心臓の血管が詰まる心筋梗塞、狭心症、足の血管が詰まる下肢閉塞性動脈硬化症も糖尿病が関与する重篤な合併症の一つとなります。

東大阪市の取り組み

東大阪市の保健センターでは、血糖値が高めの方の食事改善のサポートとして食事相談や学びの場としての教室を随時開催しています。市の事業なので費用は0円ですので、ぜひご活用ください。

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