クリニックレターvol.83 「尿路結石症とは」

2023年11月16日

皆さん、経験したことのないような突然の腰部、側腹部の激痛を自覚した経験はありませんか?もしかしたら、それは尿路結石かもしれません。今回のテーマは、尿路結石・尿管結石についてです。

【尿路結石とは】

尿路結石とは、腎臓にできる結石(①腎結石)、尿管にできる結石(②尿管結石)、膀胱にできる結石(③膀胱結石)、結石が尿道で詰まってしまう④尿道結石の4つの総称であり、一般的に尿管結石と一括りで言われる場合もあります。

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図表:いらすとACより

【結石の症状について】

通常、腎臓にできた結石は無症状で経過することも多いですが、腎臓内での結石移動や結石が尿路に落ちた時に尿の流れがせき止められる場合があります。

そうなると、尿が上流で停滞し、腎臓内部が圧迫され、突然の腰痛、側腹部痛を起こします。これを水腎症と呼びます。

夜間や早朝に起きることが多く、3~4時間続いてしまうこともあります。痛みと併せて吐き気や冷や汗もあると言われています。また、結石が尿路の中の粘膜を傷つけることもあり、その場合は血尿になる場合があります。また、結石が膀胱まで落ちてくると頻尿、残尿感が起こる場合もあります。

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【結石について】

尿の中に含まれているシュウ酸という物質が腎臓で結晶化し結石が形成されることで生じます。男性では40歳代がピークであり、女性では50歳代以降の方に多く、最近は高齢者の尿路結石も増加しています。男女比はおよそ2:1と言われています。

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尿路に出来るトゲトゲの結石、尿路結石

日本人の尿路結石という病気が昔と較べると急激に増加していると言われています。尿路結石は、男性の15%(6~7人に1人)、女性の約7%(14人に1人)が一生に一度はかかる※1といわれ、非常に頻度が高い病気です。最も強い痛みをともなう病気の1つとして知られており、痛みで救急車を呼ばれるケースも多いこの疾患ですが、食生活や生活様式の欧米化や人口の高齢化がその原因と考えられており、メタボリックシンドロームなどに連動していると言われています。

※1:2015年全国疫学調査より

【結石ができやすい時期】

尿路結石は季節変動があると言われています。特に夏場に多いと知られています。気温が高く汗をかくと脱水気味になり、尿の濃度が濃くなることで、結石の原因成分が結晶化し、結石が作られやすくなるからです。

【結石は自然には治らない?】

結石が何事もなく膀胱内に流れ着けば、よほど大きい結石でなければ、排尿の際に自然に体外に排出されます。5mmより小さい結石であれば気が付かないことがほとんどです。1cmを超えるような大きな結石の場合、膀胱の中に無症状でとどまってしまうこともあります。

【検査・治療法】

上記のような症状が出てきた場合に尿路結石を疑い、尿検査、腹部レントゲンやエコーにて検査を行います。

治療としては1cm以下の結石であれば自然排出が期待できるので、水分摂取を十分に行います。痛みに対しては鎮痛薬を服薬していただきます。1cm以上の結石が見つかった場合は部位や大きさにもよりますが、泌尿器科にて処置を行うことになります。

【予防のために】

尿路結石の5年再発率は約45%と高く、再発を防ぐためにはしっかりとした予防が必要です。

1.十分な水分補給

食事以外に2L以上の水分を摂取して尿が濃縮されて結石ができにくいようにする

2.カルシウムの摂取

カルシウムが結石の原因になるシュウ酸の吸収を抑制してくれることが判明しています。予防のためには、毎日600~800ミリグラムのカルシウムの摂取が推奨されています。効率的にカルシウムを摂取するのには牛乳や乳製品が最適です。

3.シュウ酸の制限

ほうれん草やサツマイモなどに加えて、タケノコ・レタス・バナナ・チョコレート・紅茶・緑茶・コーヒーにも多く含有されていると言われています。予防のために生活習慣は見直しましょう。

【最後に】

結石が作られる原因は体質もありますが、やはり食生活、生活習慣が主原因です。見つかった方も自然に結石が排石されることが一番です。また、再発しても早期に発見できれば、治療も最小限ですみます。普段の生活習慣も意識していただきつつ、何かあればすぐに最寄りのクリニックにご相談いただけますよう宜しくお願いいたします。

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