クリニックレターvol.86 「貧血について」

2024年2月14日

急に立ち上がった時にふらっとする、めまいがする。これって貧血かも?と思われる方は多いです。貧血が関与することはないとは言えませんが、実は、起立時のふらつき、めまいは貧血が原因ではなく、血圧の低下(起立性低血圧や迷走神経反射)が関与している事が多いです。誤解が多い病気の一つでもあります。

今回のテーマは、皆さんにも身近な病気である貧血についてです。貧血は原因が多種多様であり、一番代表的な鉄欠乏性貧血のお話がメインとなります。

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貧血とは

貧血とは体内の酸素運搬係である赤血球や赤血球の中にあるヘモグロビンという赤色素が不足する状態のことを指します。

ヘモグロビンが少ないと体内に十分に酸素が行きわたらないので、わかりやすく言えば、低酸素状態に似ています。特に労作時の息切れ(階段を上ると息が切れる)が多く、その他に倦怠感、頭痛、めまいなどの症状があります。

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貧血の原因は?

原因は様々ですが、最も多いのは、体中に酸素を運ぶ働きをするヘモグロビンの重要な材料のひとつである鉄分が不足することによる鉄欠乏性貧血です。その他に血液中のビタミンB12や葉酸が不足する巨赤芽球性貧血や腎臓の働きが悪くなり、赤血球を作る成分の1つであるエリスロポエチンの産生が不足して起こる腎性貧血などがあります。治療方法は貧血の原因により違うことがポイントです。貧血だから一概にレバーを食べたらいいというのは間違いです。

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ゴロ−@解剖生理イラストより

鉄欠乏貧血についての対処法

今回は、貧血の原因として一番多い鉄欠乏性貧血を中心に話します。まず、貧血の原因である鉄分不足を補う食事を摂るように心がけましょう。また吸収を良くするビタミンCやたんぱく質を食事と一緒に摂ることも大切です。

鉄は吸収されにくい栄養素なので、1日に成人男性で7.5mg、月経のある成人女性で10.5mgの摂取が必要になります(日本人食事摂取基準2020年版より)。

・鉄分レバー(豚・鶏)、卵黄、煮干し(かたくちいわし)、あさり、しじみ、⼩松菜、ホウレン草、きな粉、湯葉、ごま、切り干し大根、きくらげ、ひじき、のり、ココア、小麦胚芽 などに多く含まれていると言われています。

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イラストACより

貧血の治療は

鉄欠乏性貧血の治療は栄養補給が基本なので、食生活の改善やビタミン・鉄剤の処方を中心に行います。病院やクリニックでは鉄剤の内服が行われます。ただ、この鉄剤は非常にクセの強い薬であり、個人差はありますが、内服により、吐き気、便秘、便が黒くなるなどの症状が見られます。鉄剤は錠剤、粉、シロップなど種類は多くあるので、まず、少量から始めてもいいと思われます。内服が困難であれば、鉄の注射製剤もあります。また、コンビニや薬局で販売されているヘム鉄のサプリメントの内服もおススメです。

最後に

貧血の治療をする事は勿論大切ですが、より大切なのは貧血の原因を調べる事です。特に最も多い鉄欠乏性貧血の原因として、女性は月経による出血過多が多いため、必ず婦人科受診を勧める事になります。また、生理のない男性には、消化器系の癌がないか調べる事が重要となります。胃癌を調べるため胃カメラの推奨や便潜血による大腸がん検診を勧めるのが一般的となります。気になる方は、是非、かかりつけの医師にご相談ください!!

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