クリニックレター
2025.04.15
クリニックレターvol.112:「百日咳(ひゃくにちぜき)の流行にご注意を!!」
皆さま、こんにちは。現在、日本国内で百日咳(ひゃくにちぜき)の患者数が急増しています。2025年はすでに昨年を上回る4,100件以上の報告があり、特にここ最近では、成人の感染例が目立ってきています。
以前は「子どもの病気」というイメージが強かった百日咳ですが、ワクチンによる免疫が年数とともに低下することから、大人が感染して症状に悩まされるケースが増加しています。また、大人が気づかないうちに感染し、乳幼児など重症化しやすいご家族へうつしてしまうリスクもあるため、注意が必要です。
今回は、今改めて注目されている百日咳について、大人における症状や診断、治療法、そして感染を広げないための予防策をわかりやすくご紹介いたします。
百日咳とは?
百日咳は「百日咳菌(Bordetella pertussis)」という細菌が原因で起こる感染症で、読んで字のごとく、激しい咳が長期間続くのが特徴です。
特に乳児では命に関わることもあるため、注意が必要です。
百日咳の症状の経過
百日咳は、以下の3つの時期に分かれて進行します
カタル期(1〜2週間)
軽い咳や鼻水など、風邪に似た症状が出ます。
※この時期が最も感染力が高いとされています。
痙咳期(けいがいき)(2〜3週間)
発作のような激しい咳が繰り返し起こります。
「ヒュー」という吸い込む音が特徴で、乳児では**無呼吸やチアノーゼ(唇が紫色になる)**を起こすこともあります。
回復期(数週間〜数か月)
咳が徐々に軽くなっていきますが、完全に治るまでには時間がかかることもあります。
診断方法について
小児では典型的な症状から診断されやすい一方で、大人では「ただの風邪」と見過ごされることもあります。
主な検査
- 遺伝子検査(LAMP法やPCR法):高感度で数日以内に結果が得られます
- 血液検査(IgM、IgA抗体):発症から日数が経過した場合に有効
治療について
抗菌薬(マクロライド系)
アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシンなどが使用されます。
※できるだけ早い段階での治療が効果的です。
対症療法
咳を和らげるために、必要に応じて鎮咳薬や気管支拡張薬を使用します。
重症の場合は、入院が必要になることもあります。
学校保健安全法でも出席停止の日数が定められており、「特有の咳が消失するまで又は5日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで出席停止」となっております。
なぜ今、百日咳が増えているのか?
ワクチンの効果は一生続かない
DPTワクチン(3種混合ワクチン:ジフテリア、百日咳、破傷風)の免疫効果は年数とともに低下します。そのため、大人が感染して子どもにうつしてしまうケースが増えています。
ワクチン接種率の低下・誤解
「感染症は昔の病気」と思われがちですが、予防接種を控える方の増加が、再流行の一因となっています。
予防のポイント
DPTワクチン(定期接種)が最も有効です
乳幼児はもちろん、10代・大人でも追加接種が必要になることがあります。
咳が長引く場合は、早めに医療機関へご相談を
「風邪だと思っていたら百日咳だった」というケースも珍しくありません。
百日咳とマイコプラズマ感染症の違いとは?
「咳が長く続く」という点では似ていますが、原因や対応方法は異なります。
受診時の目安
- 「熱はないが夜中の咳がひどい」「咳き込んで嘔吐する」 → 百日咳を疑います
- 「咳と一緒に熱やだるさがある」 → マイコプラズマ感染症を考えます
- 大人も感染源になるため、家族内感染には特に注意が必要です。
百日咳の迅速検査はあるの?
現在、インフルエンザや溶連菌のような迅速抗原検査は百日咳にはありません。
代わりに、数日で結果が出る**遺伝子検査(PCRやLAMP)**や、血液中の抗体検査を行います。
最後に
百日咳は予防と早期対応がとても重要な感染症です。
特に小さなお子さんがいるご家庭では、大人がうつさないようにする対策も大切です。
咳が長引いている方や、感染が心配な方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
地域の皆さまの健康を守るために、これからも適切な情報と医療をお届けしてまいります。