クリニックレター
2025.05.16
クリニックレター vol.114 「多汗症について ~その汗、汗っかきなだけ?」
ゴールデンウィークが終わり、汗ばむ季節が本格的に始まりました。「自分は汗っかきなだけ」と思っていたけれど、手汗で書類が濡れてしまう、握手を避けてしまう――そんなお悩みはありませんか?
実はそれ、「多汗症」という病気かもしれません。
日本人のおよそ20人に1人が多汗症に悩んでいるとされており、決して珍しい病気ではありません。しかも、多汗症は治療によって改善が期待できる疾患です。
今回は、多汗症の特徴や対処法についてご紹介します。「もしかして...」と感じている方の参考になれば幸いです
多汗症とは? ~日常で困るこんな症状~
多汗症とは、日常生活に必要な量を超えて汗が出る状態のことです。中でも、手のひら・足の裏・脇の下・顔など特定の部位に、明らかな原因がなく汗をかくタイプは「原発性局所多汗症」と呼ばれます。
多汗症の主な特徴
- 左右対称に発汗(両手、両足など)
- 睡眠中は発汗しない
- 気温や運動に関係なく発汗がある
- ストレスや緊張で悪化することがある
どれくらいの人が悩んでいる?
日本人の約10%が多汗症の可能性があるとされ、
- 腋の下:約5.9%
- 顔・頭部:約3.6%
- 手のひら:約2.9%
- 足の裏:約2.3%
が該当します(日本皮膚科学会ガイドライン2023年より)。
発症は小児期〜思春期に始まることが多く、約30~50%の方に家族歴が見られます。
自分は多汗症?チェックリストで確認
下記の7項目のうち、4つ以上に当てはまり、6か月以上続いている場合は多汗症の可能性があります。気になる方は医療機関への受診をおすすめします。
- 特定の部位に多量の汗が出る
- 左右対称の発汗
- 睡眠中は発汗しない
- 週1回以上の頻度で発汗がある
- 25歳以下で発症
- 家族にも同様の症状がある
- 発汗により日常生活に支障がある
また、重症度を自己評価する「HDSS」というスケールもあります。下の表でスコア3または4に該当する方は、重症であると考えられています。
HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale:多汗症重症度スケール)
多汗症って治療できるの?
多汗症には様々な治療法があります。症状の程度や部位によって、様々な方法がありますので、自己判断をせずにご自身の症状に合わせて適切な方法を医師と相談することをお勧めいたします。なお、手術処置などは専門の皮膚科などでのご相談になります。
市販の制汗剤ではダメなの?
多汗症は市販の制汗剤ではきちんとカバーしきれないことも多く、保険適用の処方薬のほうが高い効果を期待できると言われています。これもどの程度の発汗で困っているのか?というところによりますので、きちんとご自身の症状の把握をお勧めします。
日常でできることはどんなことがあるのか
多汗症の症状から快適な日常生活を送るために、日々の過ごし方に工夫を入れることが重要になります。
- 肌に直接触れる衣類は、汗を吸収しやすく綿・麻・吸湿速乾素材を
- ベタつきやニオイの原因を放置しないようにこまめな着替えと制汗ケア
- 足は特に蒸れやすいため、靴・靴下:通気性重視&可能なら替えを持参
- 交感神経を刺激し、発汗を促すような刺激物(辛い物)やカフェイン・アルコールは控えめに
- 自律神経を整えるためにストレスケア(ご自身に合ったリラックス方法)
最後に
多汗症は、治療可能な病気です。悩みを一人で抱えず、まずは気軽にご相談ください。
当クリニックでは、必要に応じて皮膚科専門医とも連携を取りながら、症状に合った最適な治療法を一緒に考えていきます。
汗に悩まされず、快適に過ごすための一歩を踏み出してみませんか?