クリニックレター vol. 115 梅雨どきに急増する細菌性食中毒 ― 今年こそ「つけない・ふやさない・やっつける」

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2025.06.03

クリニックレター vol. 115 梅雨どきに急増する細菌性食中毒 ― 今年こそ「つけない・ふやさない・やっつける」

みなさん、こんにちは。東大阪市のある医療法人弘徳会 にしおかクリニックです。

気温 20 ℃、湿度 80 %前後になる梅雨は、細菌がもっとも増えやすい環境。全国統計でも 6〜9 月だけで細菌性食中毒の 約 46 % が集中しています。(食品微生物センターHP参照)

なかでも毎年トップを争うのが カンピロバクター・サルモネラ・腸炎ビブリオ。今回は「なぜ梅雨に増えるのか?」をやさしく解説し、ご家庭で今日からできる予防策をまとめました。

なぜ梅雨に多い? ― 細菌が元気になる3つの理由

① 気温が高くなる

  • しくみ:細菌の最適温度帯に入ると 20 分で 2 倍に増殖
  • :車内に 30 分放置した弁当箱

② 湿度が高い

  • しくみ:肉汁・水滴が乾かず菌が生存しやすい
  • :冷蔵庫外で解凍した鶏肉

③ 食べ物を長く出しっぱなしにしがち

  • しくみ:買い物〜調理までのタイムラグで菌数が急増
  • :帰宅後すぐ冷蔵庫に入れない食材

梅雨三強!原因菌を知ろう

カンピロバクター

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  • 潜伏期間・症状:1-7 日で発熱・下痢・腹痛。まれにギラン・バレー症候群
  • 主な潜伏場所:鶏肉の生焼け・調理器具
  • 梅雨に増える理由:少量(約 100 個)でも感染し、5 ℃以上で増殖スタート。肉汁が飛び散りやすい梅雨は交差汚染が多発
  • ワンポイント:鶏肉は中心 75 ℃・1分以上が鉄則(厚生労働省HP参照

サルモネラ

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  • 潜伏期間・症状:6-48 時間で高熱・激しい水様便・嘔吐。乳幼児は菌血症に注意
  • 主な潜伏場所:生卵・加熱不足の肉、カメなど爬虫類
  • 梅雨に増える理由:殻表面や肉の切り口で 20〜40 ℃で爆発的増殖
  • ワンポイント:卵はパックごと冷蔵庫内側へ。半熟卵は梅雨〜夏は控えめに (食品微生物センターHP参照)

腸炎ビブリオ

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  • 潜伏期間・症状:4-20 時間で急激な腹痛と下痢
  • 主な潜伏場所:魚介類・刺身
  • 梅雨に増える理由:海水温が上がると魚表面で急増。室温で 4〜6 時間放置すると数万倍
  • ワンポイント:真水に弱いので刺身は流水で洗い、4 ℃以下で保存(福井県公式サイト東京都保険医療情報

家庭でできる"食中毒 3 原則+1"

① つけない

  • 具体策:手洗い 30 秒、まな板・包丁は色分け
  • 梅雨のコツ:鶏肉の後は洗剤+熱湯で器具を殺菌

② ふやさない

  • 具体策:10 秒以内に冷蔵庫を閉め、庫内は 10 ℃以下
  • 梅雨のコツ:買い物は保冷バッグ持参、帰宅後最優先で収納

③ やっつける

  • 具体策:75 ℃ 1 分以上の加熱、翌日のカレーは再沸騰
  • 梅雨のコツ:電子レンジは肉厚部が生残りやすいので要注意

+1 捨てる

  • 具体策:常温 2 時間超え・前日開封の生肉/刺身は処分
  • 梅雨のコツ:もったいなくても"思い切り"が大事

こんな症状はすぐ受診!

  • 38 ℃以上の発熱が 2 日続く
  • 血便・激しい腹痛、黒色便
  • 嘔吐・下痢で水分摂取が困難、尿が 8 時間以上出ない
  • 心臓病・糖尿病・腎疾患をお持ちで脱水が心配

便の回数・色・食べた物をメモして来院いただくと診断がスムーズです。

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〔豆知識〕夏でも注意!ノロウイルス

主に冬に流行する「ノロウイルス」も、貝類の生食や手指からの汚染で一年中発症します。症状は突然の嘔吐と水様便が特徴で、嘔吐物の適切な処理(次亜塩素酸でのふき取り)がカギ。基本の手洗い・十分な加熱は細菌性対策と同じです。

最後に

じめじめした梅雨は、細菌が一年でもっとも元気になる季節です。

「つけない・ふやさない・やっつける・捨てる」の四つの習慣を意識し、鶏肉や卵、刺身などの加熱・保存にはいつもよりひと手間かけてみてください。
小さなお子さまやご高齢のご家族がいるご家庭では、手洗いと調理器具の洗浄・乾燥を徹底することで二次感染を防げます。

それでも 38 ℃以上の発熱や激しい下痢・嘔吐が続く場合、脱水はあっという間に進みます。無理をせず、早めに医療機関へご相談ください。

皆さまが安全でおいしい初夏の食卓を楽しめますように――。日々のちょっとした工夫で、梅雨の健康リスクを一緒に乗り越えていきましょう。

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