クリニックレター
2025.09.02
クリニックレター(敬老の日の特別編) 家族で見つける3サイン「眠気・ふらつき・むせ」 ― 薬の影響・起立性低血圧・嚥下のトラブルを早めにキャッチ ―
令和7年9月15日(月・祝)の敬老の日は、「ありがとう」に"健康の気づき"を添えるチャンスです。
高齢の方でよく見られる 「日中の強い眠気」、「立ち上がり時のふらつき」、「食事中のむせ」は、薬の副作用や血圧調整の不具合、嚥下機能の低下などのサインかもしれません。早めに気づけば、転倒や誤嚥性肺炎を予防できます。ご家族と一緒にチェックしましょう。厚労省指針でも、高齢者では薬物有害事象がふらつき・転倒などを招きやすく、家族を含めた支援の重要性が示されています。 (厚生労働省+1)
① 眠気――「お薬の影響?」をまず疑う
こんな変化は要チェック
- 会話中にうとうとする/座ってすぐ眠る
- 活動量が急に落ちた、食事中の居眠り
- ぼんやりして転びそうになる
背景に多い原因
眠剤、精神安定剤、アレルギーのお薬(ベンゾジアゼピン系・Z薬、第一世代抗ヒスタミン、抗精神病薬等)は転倒・せん妄・認知機能低下のリスクが上がります(Beers基準2023)。自己判断での継続・併用は禁物です。
今日からの対策
- お薬手帳を1冊に統合(処方薬・市販薬・サプリも全て記載)。
- 飲み忘れを恐れて重ね飲みしない。眠気が強いときは受診して調整を。
- お酒と鎮静性薬の併用は避ける。
※薬の中止・減量は必ず医師と相談してください。厚労省指針でも、非薬物的対応の優先と薬物有害事象の回避が推奨されています。
② ふらつき――起立性低血圧を簡易チェック
こんなときに起こりやすい
- 朝起き上がるとき/入浴後・食後/夏の脱水時
- 新しく降圧薬や利尿薬を開始・増量した後
医学的ポイント
起立して3分以内に 収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期が10mmHg以上下がると起立性低血圧と診断されます。薬剤、脱水、加齢性の自律神経反応低下が原因に。
自宅でできる"安全な立ち上がり法"
座位で30秒、足首を10回ぶらぶら→2) ゆっくり立つ→3) その場で足踏み10回。
こまめな水分(心・腎疾患のある方は主治医と相談)と塩分制限の過度な厳格化に注意、弾性ストッキングや誘因薬の見直しが有用と報告されています。
受診の目安
失神/胸痛/息切れを伴う、転倒が増えた、体重が急増(心不全悪化)など。
③ むせ――誤嚥性肺炎の「前ぶれ」を見逃さない
早期サイン
- 食事・飲水でむせる/湿った声になる
- 食後に痰が増える、微熱が続く/体重減少
食事のコツ
- 姿勢:椅子に深く座り、あごを軽く引く。
- 一口を小さく、とろみややわらかい形態への調整(嚥下調整食2021)を検討。
- 食後の口腔ケア(歯・舌・入れ歯)で口腔内細菌を減らす。口腔ケアは誤嚥性肺炎リスク低減に資するエビデンスが蓄積しています(質は研究により多寡あり)。
ポイント
高齢者肺炎は誤嚥性が多く、2024年の日本呼吸器学会ガイドラインでも誤嚥リスク評価とケアの重要性が強調されました。迷ったら早めにご相談ください。
家族と一緒に:3サイン早見表(チェック式)
(当てはまるものに✓。2つ以上で要相談)
□ 眠気:日中に居眠りが増えた/会話中に舟をこぐ/朝起きられない
□ ふらつき:立ち上がりでクラッとする/入浴後や食後にぼんやりする
□ むせ:水やお茶で咳き込む/「ゴロゴロ声」になる/食後に痰が増える
□ 転倒・ニアミス:この1か月で1回以上
□ お薬の変更:この1か月で新規・増量/市販薬やサプリを追加した
受診時にお持ちください(スムーズな診療のために)
- お薬手帳を1冊に統合(処方薬・市販薬・サプリ・貼り薬・点眼まで)
- 「困っている症状トップ3」を家族で決めて紙にメモ
- ふらつきやむせはスマホ動画が参考になります
- 血圧手帳・体重記録(心不全疑い時は3日で+2kgが受診目安)
※ 高齢者医療では家族・介護者の関わりが推奨されています。遠慮なくご同席ください。 厚生労働省
最後に
- 本レターは一般的な健康情報です。診断・治療は個別に主治医へご相談ください。
- お薬の自己中止・自己調整は危険です。必ず医師・薬剤師にご相談ください。
- 可能な範囲で**非薬物療法(生活・環境調整)**を優先し、薬物有害事象を避けましょう。
参考文献
- 高齢者の医薬品適正使用の指針(厚労省):高齢者では薬物有害事象によりふらつき・転倒等が生じやすく、非薬物的対応の重要性を明記。 厚生労働省
- AGS Beers Criteria 2023:BZD/Z薬、抗コリン薬、抗精神病薬等の鎮静・転倒リスク。 高齢者評価ツールキット
- 起立性低血圧の定義:起立後3分以内にSBP −20mmHgまたはDBP −10mmHg。 J-STAGE
- 起立性低血圧の対策:脱水回避、起立動作の工夫、弾性ストッキング、誘因薬の見直し。 J-STAGE
- 嚥下調整食2021 と 成人肺炎診療ガイドライン2024:誤嚥リスク評価と食形態・口腔ケアの位置づけ。jsdr.or.jp 一般社団法人日本呼吸器学会

