クリニックレター特別編: インフルエンザは「発熱からどのくらいで」受診するのがいい? 〜抗原検査のゴールデンタイムを医学的根拠から解説〜

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クリニックレター

2025.11.17

クリニックレター特別編: インフルエンザは「発熱からどのくらいで」受診するのがいい? 〜抗原検査のゴールデンタイムを医学的根拠から解説〜

現在、インフルエンザが大流行しており、「クラスの半分が休んでいる」「職場でも次々と体調不良が出ている」...といった声があちこちで聞かれます。

そんな中でご自身やご家族に急に熱が出ると、「すぐに病院でインフルエンザ検査をした方がいい?」 「検査は早ければ早いほど正確なんじゃないの?」と不安に感じる方が多いのではないでしょうか。 しかし実は、インフルエンザの迅速「抗原検査」には、最も正確に出やすい時間帯=ゴールデンタイムがあります。

このタイミングを知っておくと、

  • 検査結果(陰性・陽性)の意味がわかりやすくなる
  • 抗インフルエンザ薬を、より適切なタイミングで使いやすくなる

といったメリットがあります。

今回のクリニックレターでは、**「現在の流行状況の中で、発熱したときインフルエンザ検査をいつ・どう受けるのがよいか」**について、医学的な根拠にもとづいて、できるだけわかりやすくご説明します。

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1.発熱してすぐ(6時間以内)は「陰性になりやすい」

インフルエンザ抗原検査は、鼻や喉の粘膜にいるインフルエンザウイルスの量(ウイルス量)を見ている検査です。

ウイルス量が少ないうちに検査すると、インフルエンザを「見つけきれず」、**偽陰性(本当はインフルエンザなのに陰性と出る)**になることがあります。

ある報告では、発症から6時間未満で行った抗原検査では、

  • 感度(インフルエンザを当てられる確率)が 約40〜50%程度 にとどまり、
  • 一方、発症24〜48時間では感度が100%に上昇していた

とされています。サウスカロライナブルース

つまり、発熱直後に検査 → 「陰性」でもインフルエンザを完全には否定できない

という時間帯なのです。

2.なぜ「12〜24〜48時間」がゴールデンタイムなのか

ウイルス量が増えるタイミング

インフルエンザウイルスは、発症から12〜24時間くらいで一気に増えることがわかっています。

インフルエンザ診断に関する総説では、検体採取は発症後12〜36時間くらいが望ましく、さらに48時間以内に抗インフルエンザ薬を開始することが推奨されると述べられています。PMC

また、インフルエンザに対する迅速診断キットの感度をまとめた報告では、

  • 発症から48時間以内に検査した場合、十分に高い感度が得られ、
  • 特に24〜48時間のタイミングで高い検出率が得られる

とされています。PLOS+1

画像4.jpg

抗インフルエンザ薬の「効きやすい時間」と重なる

タミフル® や イナビル® などの抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に開始することで、症状の期間や合併症リスクを減らせることが示されています。PMC

検査のゴールデンタイム = 治療のゴールデンタイムと言ってよいタイミングです。

3.大人と子どもで、検査の当たりやすさ(感度)は違う?

子どもの方が「陽性が出やすい」

複数の研究をまとめた解析(メタ解析)では、インフルエンザ迅速抗原検査の感度は、PubMed+2NCBI+2

  • 子ども:感度 約67%
  • 大人 :感度 約54%

と、**子どもの方が検査で「陽性」と出やすい(感度が高い)**ことが示されています。

これは、

  • 子どもはウイルス量が多くなりやすい
  • 鼻水が多く、検体が採取しやすい

といった理由が関係していると考えられています。

A型とB型でも差がある

同じ解析では、ウイルスの型による違いも指摘されています。PubMed+1

  • A型:感度 約65%
  • B型:感度 約52%

と、**B型の方がやや陰性が出やすい(感度が低い)**傾向があります。

さらに、小児を対象に「発症24時間以内」に検査を行った研究では、PubMed+1

  • A型:感度 約90%
  • B型:感度 約25%

と、発症早期のB型は特に陰性が出やすいことが報告されています。

4.「発熱から何時間で受診するのが良いか」の目安

① 発熱してすぐ(〜6時間)

  • 強いぐったり感、呼吸の苦しさ、けいれんなどがなければ、少し様子をみてもよい時間帯 です。
  • 検査をしても 陰性が多く、本当のインフルエンザを見逃しやすいことがあります。

② だいたい12〜24時間経った頃

  • ウイルス量が増えてきて、抗原検査が陽性になりやすい
  • 高熱・関節痛・頭痛などインフルエンザらしい症状が揃ってくる
  • 検査の精度と、治療開始の早さのバランスが良いタイミング

③ 発症から24〜48時間

  • 抗原検査の感度が安定して高くなる頃(研究によっては感度100%という報告も)サウスカロライナブルース+1
  • 抗インフルエンザ薬も、この時間帯までに開始するのが望ましいとされています

▶ 当院としての目安(一般的なケース)

  • 強い症状がある場合:時間に関係なく「すぐ受診」
  • 比較的お元気でいられる場合:
    → 発熱から「半日〜1日くらい」を目安に、ご相談・受診をおすすめします

5.時間に関係なく、すぐ受診してほしいケース

次のような場合は、検査のタイミングよりも安全性が最優先です。

  • 乳幼児(特に0〜2歳)➡早めにお近くの小児科を受診してください。
  • 65歳以上の高齢の方
  • 心臓・肺・腎臓の病気、糖尿病、免疫低下など持病のある方
  • 妊娠中の方
  • 高熱が続きぐったりしている、呼吸が苦しい
  • 意識がぼんやりしている、けいれんがある

こうした場合は、発熱からの時間にかかわらず、早めの受診をお願いいたします。

6.当院で行っている新しい検査方法について

(多項目同時PCR検査「BioFire® SpotFire® バイオファイア・スポットファイアRパネル」)

当クリニックでは、インフルエンザを含む複数の呼吸器感染症が疑われる場合に、症状や必要性に応じて多項目同時PCR検査(BioFire® SpotFire® Respiratory Panel) を用いることがあります。

画像5.jpg

  • 鼻や喉の検体から、インフルエンザ・RSウイルス・アデノウイルス・新型コロナウイルス・百日咳菌など、15種類のウイルス・細菌を一度に調べることができる検査 です。bioMérieux Website+2BioFire Diagnostics+2
  • 結果は約20分程度で判明するよう設計されたPCR検査で、詳しい病原体の情報が得られることが特徴です。bioMérieux Website+1

検査の適応・方法・費用(保険診療との関係を含む)には条件があります。

すべての方に一律で行うものではありませんので、必要と考えられる場合に、診察の中で医師からご説明・ご提案いたします。

参考資料(医療従事者・専門家向け)

一般の方向けの本文はできるだけやさしい表現としていますが、医学的な裏づけとして、主に以下の文献・公的資料を参考にしています。

  1. Chartrand C, et al. Accuracy of Rapid Influenza Diagnostic Tests: A Meta-analysis. Ann Intern Med. 2012;156(7):500-511.(成人・小児/A型・B型の感度差)PubMed+2ACP Journals+2
  2. Heinonen S, et al. Feasibility of diagnosing influenza within 24 hours of symptom onset in children 1-3 years of age. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2011;30:387-392.(発症24時間以内の小児におけるA型90% vs B型25%)PubMed+1
  3. Peaper DR, et al. Rapid Diagnosis of Influenza: State of the Art. Clin Lab Med. 2014;34(3):365-385.(検体採取のタイミング:発症12〜36時間が望ましい等)PMC
  4. Diagnostic Testing of Influenza. South Carolina Blues Medical Policy.(<6時間と24-48時間での迅速抗原検査・銀増感法の感度 41.7-50% vs 100%)サウスカロライナブルース
  5. Seki Y, et al. Very high sensitivity of a rapid influenza diagnostic test in patients with influenza A(H1N1)pdm09 infection. PLoS One. 2020;15(4):e0231217.(発症48時間以内のRIDT高感度)PLOS
  6. CDC. Rapid Influenza Diagnostic Tests (RIDTs): Information for Clinicians.(感度・特異度、陰性結果の解釈に関する記載)疾病管理予防センター
  7. bioMérieux社資料 BIOFIRE® SPOTFIRE® Respiratory Panels / System.(多項目同時PCR検査の概要・ターゲット数・検査時間など)おのクリニック+4bioMérieux Website+4BioFire Diagnostics+4

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