クリニックレター
2026.01.16
クリニックレターvol.132 「OTC類似薬の保険見直しと私たちの対応」 ~アレルギー薬・保湿剤・湿布薬の今後~
はじめに
2026年度から、いつも使っている花粉症の薬や湿布、保湿剤の保険適用が変わる可能性があります。これは私たちの生活に大きく関わる変更ですので、今回詳しくご説明いたします。
厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会では、ドラッグストアで買える市販薬(OTC医薬品)と成分や効き目が似ている「OTC類似薬」について、保険適用の見直しが議論されています。
2025年12月19日に自民党と日本維新の会での政調会長間で合意された内容によれば、保険適用は維持されますが、薬剤費の25%(4分の1)を「特別の料金」として患者さんに追加負担していただく新しい仕組みが、2026年度中に導入される見通しとのことです。
この方針は、2025年6月に閣議決定された政府の「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針2025)にも明記されており、実施がかなり現実味を帯びています。
OTC類似薬とは何か
「OTC類似薬」とは、市販薬(OTC医薬品)と同じ有効成分を持つ処方薬のことです。
たとえば、花粉症の薬であるエピナスチン(商品名:アレジオン)は、病院で処方される「アレジオン錠20」と、薬局で買える「アレジオン20」があり、どちらも同じ有効成分で一日の最大容量もほぼ同じです。
大きな違いは3つ
- 医師の診察が必要かどうか:処方薬は診察が必要、市販薬は不要
- 保険が使えるかどうか:処方薬は保険適用(通常3割負担)、市販薬は全額自己負担
- 価格:市販薬には広告費なども上乗せされており、保険での10割負担よりもさらに高額になることもあります
どんな制度変更が議論されているのか
厚生労働省が2025年12月25日に社会保障審議会医療保険部会で示した資料によれば、今回の見直しは以下のような内容です。
対象医薬品の範囲
77成分、約1,100品目 これは、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品を機械的に選定したものです。
特別の料金
対象薬剤の薬剤費の4分の1(25%)
配慮が必要な方(特別の料金を求めない方)
子ども、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えている方、低所得者、入院患者、医師が対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考える方等については配慮が検討されています。
対象となる薬と負担の変化
① 花粉症やアレルギーの薬
フェキソフェナジン(商品名:アレグラ)やエピナスチン(アレジオン)などの抗ヒスタミン薬が対象です。
日本経済新聞の報道(2025年12月23日)によると、従来3割負担だった患者さんは、新制度では負担割合が47.5%(通常の3割負担+特別料金25%)になります。
花粉症の有病率は、環境省が2022年に発表した「花粉症環境保健マニュアル2022」によれば、全国の耳鼻咽喉科医とその家族約2万人を対象にした調査で2019年に42.5%に達しており、約10年ごとに10%増加しています。日本人のおよそ2人に1人が悩んでいる身近な症状ですから、影響を受ける方は非常に多いと考えられます。
②乾燥肌やアトピーの保湿剤
ヘパリン類似物質(商品名:ヒルドイドなど)も対象です。
日本経済新聞の報道(2025年12月23日)によれば、77成分のうち薬剤費が最も高いのはヘパリン類似物質の564億円で、OTC類似薬の中で最も多く使われている薬の一つです。
「市販の保湿クリームで代用できるのでは」という意見もありますが、医療用と市販品では濃度や使い心地が異なるため、患者さんからは不安の声が上がっています。
③湿布や鎮痛薬
肩こりや腰痛で使うロキソプロフェン配合の湿布(商品名:ロキソニンテープなど)、解熱鎮痛薬も対象です。慢性的な痛みと付き合っている方にとっては負担増になる可能性があります。
④その他の日常的な薬
風邪薬、胃腸薬、便秘薬、漢方薬なども対象に含まれます。厚生労働省の資料によれば、主な対応症状として、鼻炎、腰痛・肩こり、胃痛・胸やけ、みずむし、便秘、殺菌・消毒、解熱・痛み止め、口内炎、風邪症状全般、おでき・ふきでもの、皮膚のかゆみ・乾燥肌などが挙げられています。
患者さんからの声と懸念
全国保険医団体連合会(保団連)などが難病患者の家族とともに実施したアンケート調査(2025年10月29日発表の中間集計)では、1万2301人から回答があり、95.4%の方が「反対」と答えています。
主な理由
- 「薬代が高くなる」(83.6%)
- 「症状が悪化するのではないか」(61.0%)
家族みんなで同じ薬を使っている場合や、複数の薬を飲んでいる方は、月々の医療費が数千円から数万円単位で増える可能性があります。
保険料を払っているのに、「治療に必要な薬に保険が効きにくくなる」という事態が起これば、国民皆保険制度の根幹が揺らぐことになります。医療政策の専門家からは、経済的な事情で受診を控えることによる健康格差や医療格差につながれば、国民皆保険制度の趣旨からも望ましくないとの指摘もあります。
医療関係者が指摘する健康リスク
「保険負担が増えるから」と受診を控えて、市販薬を自己判断で使い続けることによる健康リスクも指摘されています。
①鎮痛薬の長期使用による副作用
日本腎臓学会が2016年に発表した「薬剤性腎障害診療ガイドライン」によれば、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の長期使用は、胃腸の不調や腎臓への負担が起こる可能性があると書かれています。また、厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」でも、解熱鎮痛薬が腎前性急性腎障害の原因になりうる医薬品として代表的なものに挙げられています。
②適切な診断の遅れ
医師による診断を受けず「この程度の症状なら市販薬で様子を見よう」と考えていたら、実は重大な疾患だったというケースも考えられます。
③薬の飲み合わせによる副作用
複数の市販薬を併用することで、思わぬ相互作用が起こることもあります。
厚生労働省はセルフメディケーション(軽度の体調不良は自分で対処する)を推進していますが、自己判断での薬の使用は副作用などのリスクを伴います。一度悪化した症状を治療するには、早期に適切な治療を開始した場合と比べて、よりコストがかかるケースも多いとされています。
市販薬も上手に活用しましょう
医療用の薬が市販薬として買えるようになる「スイッチOTC化」には、もちろんメリットもあります。
市販薬のよい点
- いつでも買える:薬局やドラッグストアで、病院が休みの日や夜間でも購入できます
- 待ち時間ゼロ:混んでいる病院で何時間も待つ必要がありません
- 場合によっては費用が抑えられる:軽い症状なら、診察料がかからない分、安く済むこともあります
- 薬剤師さんに相談できる:購入時に薬剤師さんが症状を聞いて、適切な薬を選んでくれます。
内閣府規制改革推進会議に提出された資料(2023年12月11日)によれば、スイッチOTCとは医療用医薬品からOTC医薬品に転用された医薬品で、医療用医薬品としての使用実績があり、有効性・安全性が確立されているものです。
「この症状なら市販薬で様子を見られそう」「いつも使っている薬と同じ成分だから大丈夫」という場合は、市販薬を活用するのも一つの選択肢です。
ただし、こんな時は必ず受診を
- 症状が重い、長引いている
- いつもと違う症状がある
- 市販薬を使っても良くならない
- 副作用が心配な症状が出た
- 慢性疾患があり、他の薬を飲んでいる
このような時は、必ず医師の診断を受けてください。
「この程度で病院に行ってもいいのかな」と迷われる方もいらっしゃいますが、早めの受診が結果的に治療費を抑え、健康を守ることにつながります。
おわりに
制度が変わっても、私たちは変わらず皆さんの健康を守るお手伝いをしていきます。
にしおかクリニックでは、最新の制度情報をもとに、患者さん一人ひとりに合った治療方法をご提案しています。
症状によっては引き続き保険適用での処方ができる場合もありますし、医療現場の工夫として、OTC医薬品が存在しない薬への切り替えで患者さんの負担を軽減できるケースもあります。
体の不調は我慢せず、早めにご相談いただくことが大切です。ちょっとした違和感でも構いません。「最近調子が悪いな」と思ったら、ぜひ一度お越しください。
※この記事は2025年12月時点の情報に基づいています。制度の詳細は今後変更される可能性がありますので、最新情報は厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。ご不明な点があれば、いつでもお気軽にお尋ねください。

