クリニックレター
2026.05.18
クリニックレターvol.142 梅雨の前こそ気をつけたい家庭でできる食中毒予防
皆さま、こんにちは。
少しずつ気温が上がり、梅雨が近づく5月後半は、食べものの傷みやすさが気になり始める時期です。食中毒というと「真夏に多い」という印象があるかもしれませんが、実際には一年を通して発生しており、家庭の食事でも起こります。厚生労働省は、家庭での食中毒は症状が軽く見えたり、風邪や寝冷えと思われたりして、気づかれにくいことがあると案内しています。
目次
食中毒の原因はひとつではありません
食中毒の原因は、細菌やウイルスだけではありません。春や秋に多い植物の毒やきのこの毒、そして年間を通してみられるアニサキスのような寄生虫が原因になることもあります。 政府広報オンラインでも、食中毒の原因には**「細菌」「ウイルス」「自然毒」「寄生虫」**があり、アニサキスは寄生虫による食中毒として案内されています。
代表的な食中毒を知っておきましょう
ここでは、ご家庭でも知っておきたい代表的な食中毒をいくつかご紹介します。原因によって、気をつけるポイントが少しずつ違います。
1.ノロウイルス
ノロウイルスは、吐き気、おう吐、下痢、腹痛などを起こす代表的な食中毒です。汚染された二枚貝が原因になることがありますが、老人ホームや幼稚園などの集団発生では、貝よりも、患者さんの吐物・便や汚れた手を介した人から人への感染が中心です。予防には、しっかりした手洗いと、二枚貝などの十分な加熱が大切です。
2.カンピロバクター
カンピロバクターは、鶏肉による食中毒で特に注意したい細菌です。鶏の刺身やたたき、加熱不十分な焼き鳥などを食べた後に発症することが多く、発熱、腹痛、下痢、吐き気などの症状がみられます。予防には、鶏肉を中心までしっかり加熱すること、そして生の鶏肉に触れた手や調理器具からほかの食品へ菌を広げないことが大切です。
3.サルモネラ
サルモネラは、卵や食肉などが原因になることが多い細菌です。症状は、腹痛、下痢、発熱、おう吐などです。予防のためには、肉や卵を十分に加熱すること、低温で保存すること、二次汚染を防ぐことが大切です。
4.腸管出血性大腸菌(O157など)
O157などは、加熱不足の肉、汚染された食品や水、手や器具を介した二次汚染などで感染することがあります。激しい腹痛、下痢、血便、おう吐などを起こし、特にお子さんや高齢者では重症化に注意が必要です。生肉や加熱不十分な肉料理は避け、肉を触った後の手洗いや器具の使い分けが大切です。
5.黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は、ほかの細菌による食中毒と少し違います。
この菌は、食品の中で増えると"エンテロトキシン"という毒素を作り、この毒素が食中毒の原因になります。菌そのものは加熱で死にますが、いったんできた毒素は熱に強いため、後から温めても十分な予防にならないことがあります。 そのため黄色ブドウ球菌では、食品の中で菌を増やさないことがとても大切です。手指の傷や手荒れから食品に菌がつくことがあるため、おにぎりやお弁当、作り置きのおかずを作るときは、手を清潔にし、室温に長く置かないようにしましょう。
このほかにも注意したいものがあります
春や秋には、野草やきのこなどの植物性自然毒による食中毒が多く報告されています。さらに、アニサキスは寄生虫(線虫)の一種で、生の魚介類や加熱・冷凍が不十分な魚介類を食べたときに食中毒を起こすことがあります。食中毒は、細菌だけの問題ではないことを知っておくことも大切です。
家庭での予防の基本は3つです
厚生労働省は、家庭での食中毒予防の基本として
「つけない」「増やさない」「やっつける」
の3つを挙げています。ご家庭でも、この3つを意識するだけで、食中毒のリスクをかなり減らすことができます。
つけない
調理の前、食事の前、トイレの後、生の肉や魚、卵を触った後は、石けんでしっかり手を洗いましょう。 包丁、まな板、ふきんなどの器具も清潔に保ち、生の肉や魚を切った器具をそのままサラダや果物に使わないことが大切です。
増やさない
買ってきた食品は早めに冷蔵庫や冷凍庫へ入れましょう。作り置きやお弁当、おにぎりなども、室温に長く置かないことが大切です。特に黄色ブドウ球菌のように、食品中で毒素を作るタイプでは、「後で温めれば大丈夫」とは言えません。まずは増やさないことが大切です。
やっつける
細菌やウイルス、寄生虫の多くは、十分な加熱で予防できます。肉やレバーなどは中心までしっかり火を通し、二枚貝も十分に加熱しましょう。厚生労働省は、残りものを温め直すときも十分に加熱し、少しでも怪しいと思ったら食べずに捨てるよう勧めています。
こんなときは食中毒を疑いましょう
腹痛、下痢、おう吐、吐き気、発熱などがあるときは、食中毒の可能性があります。特に、血便がある、症状が強い、水分がとれない、ぐったりしている場合は早めの受診が大切です。受診の際は、何を食べたか、家族に同じ症状の人がいるかも伝えると役立ちます。
最後に
食中毒は、特別な場面だけで起こるものではありません。いつもの台所、いつものお弁当、いつもの作り置きの中にも、注意したいポイントがあります。
これから梅雨、そして夏へ向かう季節です。ご家庭でも、「つけない」「増やさない」「やっつける」を意識して、毎日の食事を安全に楽しみましょう

