クリニックレター
2026.07.02
クリニックレター vol.145 話題の「マンジャロ」について ― なぜ体重とHbA1cが下がるの? 安全に使うために大切なこと ―
皆さま、こんにちは。
最近、SNSやインターネットで、「マンジャロで痩せた」という話題を目にする機会が増えました。
マンジャロは、単に"痩せるための注射"ではありません。
本来は、食事療法や運動療法を行っても血糖管理が十分でない2型糖尿病の方に使用する治療薬です。
肥満を伴う2型糖尿病の方では、血糖値やHbA1cの改善に加えて、体重が減少することがあります。適切な方に、医師の管理のもとで使用すれば、糖尿病治療の大切な選択肢の一つになります。
一方で、「楽に痩せられる注射」という印象だけが先行し、医学的な判断を伴わない使用が広がることには注意が必要です。
目次
- なぜ血糖とHbA1cが下がるのですか?
- なぜ体重が減るのですか?
- 注射が不安な方にも、比較的始めやすい薬です
- マンジャロで脱毛することはありますか?
- 痩せている方が、さらに痩せるために使うのは危険です
- SNSの体験談だけで判断しないでください
- このような時は、早めにご相談ください
- おわりに
なぜ血糖とHbA1cが下がるのですか?
マンジャロは、食事をした後に腸から出るホルモンに似た働きをする薬です。
血糖値が高い時に、すい臓からインスリンを出しやすくし、血糖を上げるホルモンの働きを抑えます。
そのため、空腹時だけでなく、食後の血糖値も整いやすくなり、結果としてHbA1cの改善につながります。
なぜ体重が減るのですか?
マンジャロには、食欲を抑えやすくし、胃から食べ物がゆっくり送り出されるようにする働きがあります。
そのため、
- 少ない食事量でも満腹感を得やすい
- 空腹感や間食が減りやすい
- 食べ過ぎを抑えやすい
といった変化が起こり、体重減少につながることがあります。
ただし、体重を減らすことだけが治療の目的ではありません。
血糖を整えながら、筋肉量、栄養状態、体力、日常生活の活動性を保つことが大切です。
注射が不安な方にも、比較的始めやすい薬です
マンジャロは、週に1回使用する注射薬です。
あらかじめ1回分の薬が入った使い切り型の注入器で、毎回の単位設定は必要ありません。注射針も器具に内蔵されているため、ご自身で針を付け替える必要はありません。
「自分で注射するのは難しそう」「針の扱いが不安」と感じる方にも、比較的導入しやすい製剤です。
ただし、操作が簡単であることと、誰でも気軽に使ってよい薬であることは別です。
開始時には、正しい使い方、保管方法、副作用が出た時の対応、使用後の廃棄方法まで確認し、医師の管理のもとで安全に続けることが大切です。
マンジャロで脱毛することはありますか?
体重が減っていく途中で、「最近、髪が抜けやすい」と感じる方がおられます。
マンジャロが直接、髪の毛を傷めると決めつけることはできません。しかし、急な体重減少や食事量の低下が体への負担となり、髪が一時的に抜けやすくなる「休止期脱毛」が起こることがあります。
たんぱく質、鉄、亜鉛などの摂取不足や、十分なエネルギーを取れていないことも、抜け毛に関係する場合があります。
脱毛が気になる時は、体重の減り方が急すぎないか、食事が十分に取れているか、筋肉量や栄養状態に問題がないかを確認することが大切です。
また、鉄欠乏や甲状腺の病気、加齢に伴う脱毛症など、別の原因が隠れていることもあります。抜け毛が長く続く場合や、一部分だけが目立って抜ける場合は、早めにご相談ください。
痩せている方が、さらに痩せるために使うのは危険です
もともと痩せている方、食事量が少ない方、高齢の方が自己判断で使用すると、脂肪だけでなく筋肉や必要な栄養まで失うおそれがあります。
低栄養、筋力低下、ふらつき、脱水、腎機能の悪化などにつながることもあります。
特に夏は、暑さや発汗に加え、吐き気、下痢、嘔吐、食欲低下が重なると、水分不足を起こしやすくなります。
「何kg減ったか」だけではなく、元気に動けているか、食事や水分を取れているか、筋肉や体力を保てているかまで確認することが必要です。
SNSの体験談だけで判断しないでください
SNSには、美容目的での使用体験や、短期間での体重変化だけを強調する投稿がみられます。
しかし、その方に糖尿病や肥満症があるのか、どのような検査を受けているのか、他の薬を使っているのか、副作用が出ていないのかは、投稿だけでは分かりません。
治療薬は、体重、血糖値、腎機能、膵炎や胆石の既往、他に使用している薬、生活状況などを確認したうえで、その方に本当に必要かどうかを判断します。
診察や継続的な経過観察を伴わないネット販売、個人輸入、SNSや知人を介した売買・譲渡は大変危険です。
薬が本物か、適切に保管されていたか、正しい量かどうかも確認できません。
このような時は、早めにご相談ください
マンジャロの使用中に、次のような症状がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。
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強い吐き気や嘔吐、下痢が続く
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食事や水分が取れない
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持続する激しい腹痛がある
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急に強いだるさやふらつきが出た
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低血糖を疑う冷や汗、動悸、手の震えがある
急性膵炎、胆のうの病気、脱水、低血糖などに注意が必要なことがあります。
おわりに
マンジャロは、適切な方に正しく使えば、血糖管理と体重管理の両方に役立つ可能性のある薬です。
しかし、「痩せること」だけを目的に、自己判断で使う薬ではありません。
にしおかクリニックでは、体重だけでなく、血糖、筋肉量、栄養状態、腎機能、生活習慣まで総合的に確認し、その方にとって安全で続けられる治療を一緒に考えていきます。
大切なのは、体重を減らすことではなく、これからも元気に動き、食べ、暮らしていける身体を守ることです。
※マンジャロは2型糖尿病の治療薬です。開始・中止・増量は自己判断で行わず、必ず医師にご相談ください。なお、肥満症には同じ有効成分を含む別製剤が使用される場合がありますが、一定の基準を満たし、医師が適応と判断した場合に限られます。
※本内容は医薬品の電子添文および糖尿病診療に関する医学的知見をもとに作成しています。

