クリニックレター
2026.07.02
クリニックレター vol.146 ワールドカップ観戦と心臓の話 ― 熱戦を楽しみながら、体も守るために ―
皆さま、こんにちは。 6月30日(水)未明に行われたブラジル戦で、日本代表は2―1で惜しくも敗れました。
最後まで粘り強く戦う姿に、多くの方が熱くなったのではないでしょうか。残念ながら日本代表のワールドカップはここで終わりましたが、大会はこれからも決勝トーナメントの熱戦が続きます。
世界の強豪同士がぶつかる大一番は、見ている私たちにも大きな興奮や緊張を与えてくれます。
一方で、深夜・早朝の観戦、睡眠不足、飲酒、暑さや水分不足などが重なると、心臓や血圧に負担がかかることがあります。
今回は、ワールドカップを最後まで元気に楽しむために、「観戦と心臓」の関係についてお伝えします。
特に、心臓病・高血圧・糖尿病などで治療中の方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
- サッカー観戦で、心臓の救急が増えたという報告があります
- なぜ心臓に負担がかかるのでしょうか?
- 特に気をつけていただきたい方
- これからの熱戦を安全に楽しむための5つのポイント
- こんな症状が出たら、すぐに救急要請を
- 最後に
サッカー観戦で、心臓の救急が増えたという報告があります
2006年ドイツワールドカップの際、ドイツ代表の試合があった日に、心臓や血管に関する救急受診がどのくらい増えたかを調べた研究があります。
その結果、ドイツ代表の試合日には、心臓や血管の救急事例が通常の約2.7倍に増えていました。
男性では約3.3倍、女性でも約1.8倍の増加がみられ、心筋梗塞や狭心症、不整脈などが増えていました。
もちろん、「試合を見たら必ず心臓病になる」という意味ではありません。
しかし、大きな試合で感じる興奮や緊張に、睡眠不足、飲酒、水分不足などが重なると、心臓に負担がかかることがあります。
なぜ心臓に負担がかかるのでしょうか?
1.興奮や緊張で、血圧と脈が上がる
ゴール、逆転、PK戦など、試合が大きく動く場面では、思わず体に力が入ります。
強い興奮や緊張が続くと、血圧や脈拍が上がり、心臓の負担が増えることがあります。
2.深夜・早朝観戦による睡眠不足
ワールドカップでは、日本時間で深夜から早朝にかけて行われる試合も少なくありません。
睡眠不足は、血圧や血糖値の乱れにつながることがあります。翌日の仕事、運転、暑い時間帯の外出や作業にも注意が必要です。
3.水分不足や夏の暑さ
夜でも、室温や寝苦しさ、飲酒などで気づかないうちに水分が不足することがあります。
水分不足は体への負担となり、特に高齢の方や、心臓・腎臓に病気のある方では注意が必要です。
4.夜食や塩分の多いおつまみ
深夜のラーメン、揚げ物、スナック菓子、飲酒は、血圧や血糖値に影響します。応援の時間も、食べ過ぎ・飲み過ぎには気をつけましょう。
特に気をつけていただきたい方
次のような方は、観戦中も少し慎重に過ごしてください。
- 高血圧があり、薬を飲んでいる方
- 糖尿病がある方
- 狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの治療歴がある方
- 脂質異常症がある方
- 腎臓の機能が低下している方
- 以前に胸痛、動悸、息切れ、めまいを経験したことがある方
「応援に夢中で薬を飲み忘れた」
「胸が少し苦しかったけれど、試合が終わるまで我慢した」
このようなことは避けてください。
これからの熱戦を安全に楽しむための5つのポイント
① お薬は、普段どおりに
降圧薬や糖尿病薬は、観戦のために服用時間を変えたり、自己判断で増減したりしないでください。
いつも決められた時刻・方法で服用しましょう。
② 水やお茶を手元に置く
観戦中は、水や麦茶を少しずつ飲みましょう。
糖分の多い飲み物やアルコールだけで水分補給をしないことも大切です。
③ お酒と夜食は控えめに
飲酒は控えめにし、おつまみも食べ過ぎないようにしましょう。
特に塩分や脂肪の多い食事は、血圧や心臓への負担につながります。
④ 観戦後は、しっかり休む
夜更かしをした翌日は、できるだけ睡眠を取りましょう。
眠気が残る時は、車の運転や暑い時間帯の外出、激しい運動は控えてください。
⑤ 体調が不安な時は、無理をしない
体調に不安がある時は、途中で観戦をやめて休むことも大切です。
応援も、まずは健康な体があってこそ楽しめます。
こんな症状が出たら、すぐに救急要請を
観戦中に次のような症状が出た場合は、試合を見続けず、すぐに救急要請を考えてください。
- 胸の痛み、圧迫感、締め付けられる感じ
- 冷や汗、急に顔色が悪くなる
- 急な息苦しさ、強い動悸
- 背中、肩、あご、腕に広がる痛み
- めまい、意識が遠のく感じ
「試合が終わるまで様子を見よう」は危険です。
強い症状や、症状が続く場合は、迷わず119番へ連絡してください。
最後に
日本代表の挑戦は終わりましたが、ワールドカップの熱戦はまだまだ続きます。
世界最高峰のプレーを楽しみながら、体調にも少し気を配って、この特別な大会を最後まで味わいたいですね。
にしおかクリニックでは、血圧、糖尿病、心臓病の治療だけでなく、日々の生活の中で安心して過ごすためのお手伝いも大切にしています。
体調に不安がある方、観戦中に気になる症状があった方は、遠慮なくご相談ください。
参考文献:
Wilbert-Lampen U, et al. Cardiovascular Events during World Cup Soccer. N Engl J Med. 2008;358:475-483.

