クリニックレター
2026.08.03
クリニックレター Vol.149「脂肪肝」の名前が変わりました。― 2023年、世界で病名が変わった理由をご存じですか? ―
皆さま、こんにちは。健康診断で「脂肪肝がありますね」と言われたことはありませんか?
実は近年、この脂肪肝の国際的な病名が変更されました。
これまで使われていたNAFLD(非アルコール性脂肪肝:ナフルド)という名称は、
MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患:マッスルディーもしくはマッスルド)へと変わっています。
「病名が変わっただけでしょう?」と思われるかもしれません。しかし、この変更には、脂肪肝という病気に対する医学の考え方の大きな変化が反映されています。
なぜ病名が変わったのでしょう?
これまで使われていたNAFLD(Non-Alcoholic Fatty Liver Disease)は、「お酒をあまり飲まない人の脂肪肝」という意味でした。
しかし研究が進み、多くの患者さんでは
- 肥満
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
- メタボリックシンドローム
などの**代謝異常(生活習慣病)**が病気の中心であることが分かってきました。
つまり、「お酒を飲まないこと」ではなく、「代謝異常があること」が脂肪肝の本質だったのです。
そこで2023年、世界の肝臓学会が共同でMASLDという新しい病名を提唱しました。
MASLDって何?
MASLDとはMetabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Diseaseの略です。
日本語では「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」と訳されます。
少し難しい名前ですが、「生活習慣病と深く関係する脂肪肝」と考えていただければ十分です。
「脂肪肝くらい大丈夫」は間違いです
以前は「脂肪肝は症状がないから心配ない」と思われることも少なくありませんでした。
しかし現在では、脂肪肝は
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
などの病気とも深く関係することが分かっています。
さらに一部の方では、脂肪肝が進行してMASH(マッシュ)(以前のNASH)となり、肝臓に炎症や線維化(肝臓が硬くなる変化)が起こることで、肝硬変や肝がんへ進行することもあります。
つまり、「脂肪肝だから様子をみましょう」ではなく、「早めに生活習慣を見直すことが大切な病気」という考え方へ変わってきています。
健康診断で指摘されたら放置しないでください
脂肪肝の多くは、初期にはほとんど症状がありません。そのため、健康診断で
- 脂肪肝
- AST・ALT高値
- γ-GTP高値
を指摘されても、放置してしまう方が少なくありません。特に、
- お腹周りが気になる
- 血糖値が高い
- 血圧が高い
- コレステロールや中性脂肪が高い
という方は、脂肪肝が隠れている可能性があります。早めに医療機関で相談し、必要に応じて血液検査や腹部超音波検査を受けることをおすすめします。
治療はありますか?
現在、MASLDの治療の基本は生活習慣の改善です。
適度な運動と食事の見直しにより、体重を5〜10%減らすことで脂肪肝や肝機能の改善が期待できることが分かっています。
また、糖尿病・高血圧・脂質異常症などを適切に治療することも大切です。患者さんによっては、肥満や糖尿病の治療薬が脂肪肝の改善に役立つ場合もありますが、現時点でMASLDそのものに対する国内承認薬は限られており、まずは生活習慣の改善が基本です。
最後に
医学は日々進歩しています。病気の名前が変わることは珍しいことではありません。
今回の病名変更で最も大切なのは、「脂肪肝は生活習慣病と深く関係する病気であり、早めの対策によって改善が期待できる病気ということが、より明確になった点です。
健診で脂肪肝を指摘された方、肝機能異常を指摘された方、生活習慣が気になる方は、「症状がないから大丈夫」と思わず、お気軽にご相談ください。

