クリニックレター
2026.10.02
クリニックレター vol.156 その動悸、大丈夫? ― ドキドキ・脈が飛ぶ...見逃したくない不整脈のサイン ―
「急に心臓がドキドキする」
「脈が一瞬飛ぶ感じがする」
「何もしていないのに脈が速い」
「時々、胸がドンと強く打つ」
こんな経験はありませんか?
こうした症状は、**「不整脈」**によって起こっていることがあります。
ただし、不整脈にはほとんど心配のないものから、きちんと診断・治療した方がよいものまで、さまざまな種類があります。
大切なのは、
「動悸がある=危険」ではなく、
「どんな動悸なのか」を確認することです。
そもそも「不整脈」って何?
私たちの心臓は、電気信号によって規則正しく動き、全身へ血液を送り出しています。
この心臓のリズムが、
- 速くなる
- 遅くなる
- バラバラになる
- ときどき脈が飛ぶ
といった状態を、まとめて「不整脈」と呼びます。
不整脈という名前だけを聞くと心配になりますが、健康な方にもみられる期外収縮など、治療を必要としない場合もあります。
一方で、放置せずに診断した方がよい不整脈もあります。
「脈が飛ぶ」「ドキッとする」
「一瞬、脈が抜けた感じがする」
「突然、胸がドンとする」
このような症状で比較的よくみられるのが、期外収縮です。
心臓が通常より少し早いタイミングで収縮するため、その後の脈との間隔が長くなり、「脈が飛んだ」と感じることがあります。
期外収縮の多くは大きな問題になりません。
ただし、
頻繁に繰り返す、以前より増えた、長く続く、息苦しさやめまいを伴う
といった場合には、一度心電図などで確認しておくことをおすすめします。
注意したい「バラバラの脈」
特に知っておいていただきたい不整脈の一つが、
「心房細動」です。
心房細動では、脈が速くなったり、脈の間隔がバラバラになったりします。
動悸、息切れ、疲れやすさ、胸の違和感、めまいなどで気づくことがありますが、ほとんど症状がなく、健康診断などで偶然見つかる方もいます。
心房細動で注意したいのは、動悸だけではありません。
心房の中で血液がよどむことで血栓ができ、その血栓が脳へ飛ぶと、脳梗塞を起こすことがあります。
そのため、症状が軽くても、きちんと診断することが大切です。
こんな動悸は、一度ご相談ください
✓ 動悸を繰り返すようになった
✓ 突然、脈が速くなり、しばらく続く
✓ 脈がバラバラに感じる
✓ 脈が極端に遅く感じる
✓ 動悸と一緒に息切れやめまいがある
✓ 最近、脈が飛ぶ回数が増えてきた
✓ 健康診断で不整脈を指摘された
こうした症状がある場合は、一度心電図で確認してみましょう。
特に、
強い胸痛、強い呼吸困難、意識を失う・失いそうになる症状
を伴う場合は、通常の外来受診を待たず、緊急の評価が必要になることがあります。
動悸がしたら「脈」を触ってみましょう
症状が出ているときに、ご自身の脈を確認しておくと診断の大切な手がかりになります。
手首の親指側に、反対の手の人差し指・中指・薬指の3本をそっと当てて、脈の速さやリズムを感じてみましょう。
確認したいのは、
① 速い? 遅い?
② 規則正しい? バラバラ?
③ 脈が飛んでいない?
④ 何分くらい続いた?
という点です。
可能であれば、症状が始まった時間や、そのとき何をしていたかも覚えておきましょう。
スマートウォッチなどで心拍数や心電図を記録できた場合は、記録を消さずに診察時にお見せください。
「心電図は正常でした」でも、不整脈がないとは限りません
ここは、とても大切なポイントです。
病院やクリニックで行う通常の心電図は、その瞬間の心臓のリズムを記録する検査です。
ところが不整脈の中には、
「朝だけ出る」
「夜になるとドキドキする」
「運動したときだけ出る」
「1日に何回か脈が飛ぶ」
「数日に一度、突然脈が速くなる」
など、発作的に現れて、しばらくすると元に戻ってしまうものがあります。
そのため、
自宅ではドキドキしていたのに、クリニックに到着した頃には治まっている。
そして、そのときに心電図をとると、
「異常なし」
ということも珍しくありません。
つまり、
診察時の心電図が正常でも、発作的な不整脈を完全には否定できません。
そこで役立つのが「ホルター心電図」です
ホルター心電図は、小型の心電計を身につけて、日常生活を送りながら長時間、心電図を記録する検査です。
一般的な24時間ホルター心電図では、
寝ているとき、仕事をしているとき、歩いているとき、食事をしているとき......
といった普段の生活の中で、心臓がどのようなリズムで動いているのかを記録します。
通常の心電図がいわば**「心臓の写真」**だとすれば、
ホルター心電図は「心臓の一日を記録する動画」のような検査です。
長時間記録することで、
- 動悸を感じた時間に、本当に不整脈が起きていたのか
- どのような種類の不整脈なのか
- 1日にどのくらい不整脈が出ているのか
- 夜間や運動時に脈が速く・遅くなっていないか
などを調べることができます。
ただし「24時間つければ、必ず見つかる」わけではありません
これも大切です。
ホルター心電図をつけている24時間に症状が出なければ、原因となる不整脈を捉えられないことがあります。
不整脈を見つけるためには、
「症状がどのくらいの頻度で起こるか」
に合わせて検査方法を選ぶことが重要です。
ほぼ毎日のように症状がある
→ 24時間ホルター心電図が有用です。
数日に1回、週に1回など症状が少ない
→ より長期間記録できる心電図やイベント心電図などが適している場合があります。
つまり、長く記録すればするほどよいという単純な話ではなく、症状の出方に合わせて適切な検査を選ぶことが大切です。
スマートウォッチも大切な手がかり。でも、それだけで診断はしません
最近では、スマートウォッチなどで脈拍や心電図を記録できるようになりました。
動悸がした瞬間の記録が残っていれば、診察の際に非常に参考になることがあります。
一方で、スマートウォッチなどのウェアラブル機器には、測定方法や検出できる不整脈に限界があります。
「スマートウォッチで異常なしだったから大丈夫」
「心房細動と表示されたから間違いなく心房細動だ」
と自己判断するのではなく、気になる記録があれば医療機関で確認しましょう。
心臓からの「小さなサイン」を見逃さないで。
動悸や脈の乱れのすべてが、危険な不整脈というわけではありません。
一方で、
「いつものことだから」
「すぐ治るから」
「病院で心電図をとったら正常だったから」
と、そのままにしてしまうのもおすすめできません。
不整脈は、**「症状が出ている瞬間の心電図を捉えること」**が診断の大きな手がかりになります。
最近、
「ドキドキする」
「脈が飛ぶ」
「脈がバラバラする」
と感じることが増えてきたら、一度ご相談ください。
必要に応じて、通常の心電図だけでなく、ホルター心電図などを使って普段の生活の中での心臓のリズムを確認することも大切です。
その動悸は、心臓から届いた「小さなサイン」かもしれません。
気になる症状がありましたら、普段の診察の際にもお気軽にご相談ください。
医療法人弘徳会
にしおかクリニック

