クリニックレター
2026.10.16
クリニックレター vol.158.「身長が縮むのは、年齢のせい?」 ― 骨折してからでは遅い! 知っておきたい骨粗鬆症のサイン ― 10月20日は「世界骨粗鬆症デー」
「若い頃は160cmあったのに、最近測ったら157cmになっていた...」
「健康診断で身長が縮んでいて、ちょっとショック!」
そんな経験はありませんか?
実は、年齢を重ねるにつれて身長が少しずつ低くなることは、決して珍しくありません。
「もう年だから仕方ない」と思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
その身長の変化、もしかすると骨からのSOSかもしれません。
10月20日は「世界骨粗鬆症デー」。
今回は、身長が縮む理由と、その背景に隠れていることがある「骨粗鬆症」について、わかりやすく解説します。
なぜ年齢とともに身長が縮むの?
身長が縮む主な理由は、次の3つです。
1.背骨のクッションが薄くなる
背骨はたくさんの骨が積み重なってできています。その骨と骨の間には「椎間板(ついかんばん)」というクッションがあります。
加齢とともに椎間板の水分が減り、少しずつ薄くなることで、背骨全体の長さが短くなります。
2.背筋が弱くなり、姿勢が変化する
年齢とともに背中やお腹の筋力が低下すると、背中が丸くなったり、前かがみの姿勢になったりします。
その結果、身長を測ると以前より低くなることがあります。
3.骨粗鬆症によって背骨がつぶれていることも!
実は、これが最も注意したい原因です。
骨粗鬆症によって背骨が弱くなると、体重を支えきれず、背骨の一部がつぶれるように骨折することがあります。
これを「椎体骨折(ついたいこっせつ)」といいます。
驚くことに、強い痛みを感じないまま骨折していることもあるのです。
「昔より4cm縮んだ」は要注意!
世界骨粗鬆症デーを推進する国際骨粗鬆症財団(IOF)は、若い頃と比べて身長が4cm以上縮んだ場合、骨粗鬆症や背骨の骨折を疑う重要なサインとしています。
例えば、
- 若い頃160cm → 現在156cm
- 若い頃155cm → 現在151cm
こうした変化があれば、一度、骨の状態を確認することをおすすめします。
もちろん、身長が4cm縮んだからといって、必ず骨粗鬆症というわけではありません。
しかし、「年齢のせい」と決めつけないことが大切です。
次のような変化にも注意しましょう。
- 以前より背中が丸くなった
- 壁に背中をつけると、頭が壁につきにくい
- 以前より腰や背中が曲がってきた
- 軽い動作で背中や腰が痛くなった
また、4cm未満でも、短期間で急に身長が縮んだ場合や、新たな背中の痛みが出た場合には相談が必要です。
骨粗鬆症は、痛みがなくても進行する!
骨粗鬆症とは、骨の量や質が低下し、骨折しやすくなる病気です。
特に閉経後の女性では、女性ホルモンの減少によって骨密度が低下しやすくなります。
一方、男性も高齢になると骨粗鬆症になることがあります。
骨粗鬆症の怖いところは、骨が弱くなっても、通常は痛みなどの自覚症状がないことです。
そして、転倒などをきっかけに骨折して、初めて気づくケースもあります。
特に注意したい骨折は、
- 背骨の骨折(椎体骨折)
- 太ももの付け根の骨折(大腿骨近位部骨折)
- 手首の骨折(橈骨遠位端骨折)
などです。
なかでも太ももの付け根の骨折は、手術や入院が必要になることが多く、その後の歩行能力や日常生活に大きな影響を与えることがあります。
骨折をきっかけに、介護が必要になる場合もあるのです。
骨の健康状態、一度チェックしてみませんか?
骨粗鬆症は、自覚症状がないまま進行することが多いため、早めに骨の状態を確認することが大切です。
特に、次のような方は注意が必要です。
- 65歳以上の女性、70歳以上の男性
- 閉経後の女性
- 若い頃と比べて身長が大きく縮んだ方
- 軽い転倒などで骨折したことがある方
- ステロイド薬を長期間使用している方
当クリニックでは、超音波を利用した骨の健康チェック(骨密度測定)を行っています。
体への負担が少なく、放射線を使用しない検査で、骨の状態を知るきっかけになります。
ただし、超音波による測定だけでは骨粗鬆症の確定診断はできません。検査結果や症状によっては、より詳しい骨密度検査や背骨のレントゲン検査などが必要になることがあります。
「まだ骨折していないから大丈夫」ではなく、骨折する前に骨の健康を見直すことが大切です。
骨折を防ぐために、今日からできること
骨粗鬆症の予防には、食事・運動・生活習慣の見直しが重要です。
カルシウムをしっかりとる
牛乳、ヨーグルト、小魚、大豆製品、小松菜などを、毎日の食事に取り入れましょう。
ビタミンDも忘れずに
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けます。
魚類やきのこ類などに含まれており、適度に日光を浴びることでも体内で作られます。
歩くこと、筋力を保つこと
ウォーキングや無理のない筋力トレーニングは、骨や筋肉の維持に役立ちます。
また、バランス運動は転倒予防にも効果的です。
ただし、すでに骨粗鬆症や背骨の骨折がある方では、前かがみになる運動や無理な負荷を避け、医師などに相談してください。
必要な方には薬による治療も
骨折の危険性が高い場合は、食事や運動だけでは十分でないことがあります。
骨が壊れるのを抑える薬や、骨の形成を促す薬などを使い、骨折を予防します。
骨粗鬆症は、早期に発見して適切に治療することで、将来の骨折リスクを減らすことが期待できます。
院長からのメッセージ
「身長が縮むのは、年齢のせいだから仕方ない」
そう思われている方は多いかもしれません。
確かに、年齢とともに椎間板や姿勢が変化し、少しずつ身長が低くなることはあります。
しかし、その背景に、痛みのない背骨の骨折が隠れていることもあります。
日々の診療や在宅医療を通じて、骨折をきっかけに、それまで元気に歩いていた方の生活が大きく変わる場面に接することがあります。
だからこそ、私が大切にしたいのは、骨折してから治療するのではなく、骨折する前に気づき、予防することです。
身長が縮んだ、背中が丸くなった、最近転びやすくなった。
そんな小さな変化も、ご自身の骨の健康を考えるきっかけにしてください。
「10年後も、自分の足で歩くために。」
今から骨の健康を守っていきましょう。
気になることがあれば、どうぞ診察時にご相談ください。
医療法人弘徳会 にしおかクリニック
院長 西岡 弘樹
参考文献・資料
- 日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』
- International Osteoporosis Foundation(IOF): Osteoporosis Risk Check / World Osteoporosis Day
- Bone Health & Osteoporosis Foundation: Osteoporosis and Your Spine

